2011/08/04

北杜市(旧・須玉町)大豆生田

大豆生田交差点

 小学生の頃、国語学者の金田一春彦が僕の住む町に講演会でやってきたことがあった。どう言う縁でか、その講演会を母と二人で聴きに行ったのだけど、当時の僕にも非常に面白い内容が含まれていて、そのとき紹介されたいくつかのエピソードが今でも鮮明に心に残っている。
 ディテールは曖昧なのだけど、そのひとつが、

 朝出勤するときに、近所の奥さんが庭仕事をしているところを通りかかり挨拶をしたのだが、そのあと忘れ物をしたことに気付いて家に戻った。ところが再びそこを通ってその奥さんと顔を合わせなければならず、非常にバツが悪かった。と、この話をアメリカ人の友人にしたところ、彼曰く、二度目に通るときに「先ほど私の双子の弟が通りかかりませんでしたか?」と言えば良い

と言うもの。そしてもう一つが、この「大豆生田」の話だった。これについても僕自身に多少の誤解があるかもしれないのだけど、

 日本語の言葉、地名、苗字から逆に日本語に存在する発音を規定するとした場合、「あ」は例えば「あひる」と言う言葉の存在によって日本語本来の発音だと規定できる。この方法で五十音のすべての発音を潰していったときに、最後に残ったのが「みゅ」と言う音だった。少し考えてみても、身の回りの言葉で「みゅ」がつくものにまったく思い当たらない。例えば「猫がみゅうみゅう鳴いている」などと言う表現もあり得るが、こう言った擬音語ではない言葉、地名、苗字で探し出したい。実際の言葉から発音を規定すると言う立場に立った場合、今のままでは「みゅ」は日本語の発音ではないと言うことになってしまう。そのようなときに出くわしたのが、「大豆生田」と言う苗字だった。こう書いて「おおまみゅうだ」と読み、どこどこ[1]に存在する苗字なのだが、この苗字のおかげで晴れて「みゅ」は日本語の発音だと言うことが出来るようになった。

 この話は、金田一氏の著作でも紹介されている有名な話らしいのだが、当時小学生の僕にはかなり衝撃的な話題で、「大豆生田」と言う難読苗字とともに記憶されることとなる。

 さて、朝から直行で日帰りの出張に行ってきたのだが、割りと行く頻度の多い韮崎行きと併せて、今回は近所の北杜市(旧・須玉町)にも寄る用事があった。事前に行き先の所在地を調べているときに地図サイトで見つけたのが「大豆生田」と言う交差点。
 講演会で聞いたときは苗字として紹介されていたので、違う読み方ではないかと思いつつも、実際にその交差点を通ってみたいと思い、わざわざそこを通ってきた。
 ここでの読みは「まみょうだ」。もともと「まめうだ」だったと考えると、「まみゅうだ」よりも「まみょうだ」の方が読みとしては自然だと感じてしまうのだが。

 と言うわけで、充実した出張になった。やはり出張は一人で行くのが良いね。

1. 実際には話のなかで具体的な地名が出されていたと記憶している。今調べてみると、栃木県にある苗字のようだ。戻る

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